映画『フロントライン』

映画『フロントライン』公式サイト|絶賛上映中
最前線で守るべきは、この国か、目の前の命か?映画『フロントライン』絶賛上映中 -事実に基づく物語-

公式HP

先日、フロントラインという映画を見てきました。感想を書いていきたいと思います。ネタバレになるかもです。

『フロントライン』ってどんな映画?

物語の舞台となっているのが、2020年の横浜港に寄港した豪華客船ダイアモンドプリンセス号。
そこで対応するDMATとそれらを取り巻く人々の活動と苦悩を描いた映画です。これは事実に基づいた物語です。

DMATとは

まず、この映画の主役とも言えるDMATとは何でしょうか。
Disaster Medical Assistance Team(災害派遣医療チーム)の頭文字をとってDMATと呼ばれています。災害急性期(大体災害発生2日目から1週間ぐらい)に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チームです。
DMATが創設されたきっかけとなったのが、阪神淡路大震災でした。初期医療体制の遅れから助けることのできなかった命がたくさんありました。その反省、教訓としてDMATができました。

DMATの構成は医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)で構成されます。大体医師1人、看護師2人、業務調整員1人の構成です。

普段は病院に勤務して、出動依頼があれば出ていく感じです。ただ、病院の勤務から外れることになるので、病院長が出動の判断を下すようです。

2020年当時の背景

(上記のHPから2020年当時のTwitterが検索できます。当時何を呟いていたか思い出してみるのもいかがでしょうか。)

2020年当時、新型コロナウイルス感染症が中国で流行しており、犠牲者が出ているという報道がありました。まだウイルスの全貌が明らかになっていない、未知のウイルスでした。現在のようにワクチンも抗ウイルス薬もありません。そんな状況で新型コロナウイルス感染者が乗っているダイアモンドプリンセス号が横浜港に寄港しました。ダイアモンドプリンセス号には3700人が乗っていたそうです。

そんな状況下でだれが対応するのか、フロントラインに立つのか。船内の切羽詰まった場面から映画が始まります。

ちなみに当時私は医薬品卸の管理薬剤師でしたが、消毒剤が出払っていたことを覚えています。

DMATの出動経緯

本来であれば港を管轄している横浜市が、そして感染症関連の業務を行っている市の保健所(区かな?)が対応しなければならなかった。しかし、それらは対応を拒否したとのこと。じゃあどうする?船に乗っている3700人はどうなる?ということで神奈川県はDMATの出動を要請しました。
どこも対応したくないと言っている中で、神奈川県庁は腹を決めたわけです。これは勇気がいることでしょう。しかし、勇気を出したとしてじゃあどう対応する?となった時に頼れる先がなかったのも事実。すぐに動いてくれそうなのがDMATだったということでしょうね。

ただ、作中でも言及されていますが、今でこそDMATは新興感染症等のまん延時の活動が想定されていますが、当時は自然災害に対する組織であり、感染症は門外漢でした。そんな中よく引き受けたなという印象でした。というよりは受けざるを得なかった感じですね。フロントラインに立たされたと言えますね。

ちなみに関東の感染症学会は早々に撤退していました。いや、一番の腕の見せ所じゃねえの?何してんの。専門家が撤退して門外漢のDMATが残るというよくわからん。無責任な奴らだなという印象を持ちました。

厚労省の役人

初期対応で発熱患者の搬送先の病院を探している時に現れたのが、厚労省の役人でした。いっちゃなんですが、役人のイメージってこんな感じだよなという印象でした。いけすかない奴。松坂桃李の演技もハマっていました。

現状把握をしてさらっと搬送先の病院の確保(他県も含め)を済ませていたのはさすがエリート役人。ちょっとムカつくけど。

当初、厚労省としてのウイルスを日本国内に持ち込ませないことを主眼に置いていました。しかし、だんだんと結城医師の意見に同調していく動きを見せていきます。なぜこう変化していったかも見どころだと思います。

物語が進んでいくと普通の対応では時間がかかりすぎる事例がたくさん出てきます。しかし、途中から役人らしからぬ行動を見せ始めるので面白いです。また、ウイルスを持ち込ませないということよりも主人公の結城医師の影響を受けてか、行動方針を変えた印象があります。厚労省内でのやり取り、調整をどうしていたかが気になります。スピンオフ作品とか出ないかな。

DMAT隊員とその家族

DMAT隊員にも家族がいます。自身が危険ば場所に乗り込む中、その家族の心境がよく描かれています。そして、家族が受けた不当な扱い、誹謗中傷も。一般人からだけでなく、本来理解を示すべきな同僚からも。一応、自分も医療人の端くれですが、危機対応している同僚を除け者にするその精神がよくわかりませんでした。それが平然と行われていたということに当時の新型コロナウイルスの異常性があると感じました。いや新型コロナウイルスというより、まだ性質が明らかになっていないものへの恐怖の現れと表現した方が正確でしょうか。

映画に登場する『悪役』

悪役と書いておきながら、ちょっと違うかもです。
マスコミ及び感染症を専門とする医師が物語を引っ掻きまわす役目として出てきます。マスコミは数字(視聴率)が取れればなんでもいい、過剰に恐怖を煽る、都合の良い事実のみを報道するといういわゆるマスゴミと言われるムーブをします。いつ何時もかわなんなこいつら。また、テレビに出ていた『専門家』もいますが、こいつらも実情を理解していないコメントを残しています。要は安全圏から前線を貶しています。災害時にテレビに出ている専門家は話半分で聞いた方がいいという教訓ですかね。

また、感染症を専門とする医師がYouTubeに批判動画を上げたことも映画で描かれていました。こちらは実際に船には乗ったようですが、現場の邪魔にしかならなかったためすぐに追い出されたそうです。専門家としての知識があったとして、実情に合わせた提案を指示系統に沿ってやらないといけないのにそれをしなかったためのようです。
他分野でもそうですが、どれだけその意見が正しくても、現実的な解決策でないと意味がないです。製造業でいうなら、ミスを減らす為に最新式の設備を導入しろといってくる監査員みたいな感じでしょうか。それができれば苦労はしねえと似たものでしょうか。視野は広く持ちたいものです。

まとめ

2020年当時に起こったダイアモンドプリンセス号のコロナ集団感染。
DMATだけでなく、船のスタッフ、厚労省などその対応にあたった人たちの奮闘、引っ掻きまわすマスコミ、一部医師、専門家、未知の恐怖からか現場で対応している人たちを貶す一般人。いろんな側面からあの当時を描いた映画でした。後から見ればあの対応はどうだったか、不味かったんじゃないか、よかったとか言えますが、あの当時何もわかっていない中、“フロントライン“で対応していた方々には頭が下がります。


当時の対応記録をしっかり検証し次に活かすことが求められてきますが、果たしてその時正しい対応が出来るのか。また、何が正しいのか判断できるのか全ての人が考える必要はあるでしょうね。
色々入り混じった感想が出てくる映画だと思います。いい映画でした。

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小説版もあります。ぜひ手に取って読んでみてはいかがでしょうか。

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